ゼロトラストは注目度の高いセキュリティモデルですが、実際の導入現場では「思ったほど効果が出ない」「現場が混乱した」といった失敗も少なくありません。原因の多くは、技術そのものではなく導入プロセスや設計思想のズレにあります。本記事では、ゼロトラスト導入でよくある失敗例と、その具体的な対策を実務視点で解説します。
※ ゼロトラストの基本的な考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
👉 ゼロトラストとは?|境界防御の限界と新しいセキュリティモデル
ゼロトラスト導入で失敗が起こる理由
「考え方」と「導入方法」が混同されやすい
ゼロトラストはセキュリティ製品の名称ではなく、設計思想・運用モデルです。しかし現場では「ZTNAを入れた=ゼロトラスト」「MFAを入れた=完了」と誤解されがちです。
業務・組織への影響が大きい
アクセス制御や認証強化は、業務フローに直接影響します。IT部門だけで判断すると、現場とのギャップが生じやすくなります。
短期間で成果を求めすぎる
ゼロトラストは段階的に成熟させるものです。短期間で完成形を目指すと、無理な設計になり失敗につながります。
ゼロトラスト導入でよくある失敗例
失敗例① ツール先行で導入してしまう
MFA、EDR、ZTNAなどを個別に導入した結果、ポリシーが統一されず「管理が複雑化」するケースです。結果として、ゼロトラスト全体像が見えなくなります。
失敗例② 現場の業務影響を考慮しない
多要素認証やアクセス制限を一律適用し、業務が滞ることで現場の不満が高まります。例外設定が増え、セキュリティが形骸化する原因になります。
失敗例③ ゴールが曖昧なまま進めてしまう
「どこまでやれば十分なのか」が定義されていないと、投資が分散し、成果が見えません。
失敗例④ 運用体制を考えずに導入する
導入後にログを確認する人がいない、設定変更が放置されるなど、運用面で破綻するケースも多く見られます。
失敗例⑤ 経営層・他部門を巻き込めていない
ゼロトラストは全社施策です。IT部門だけで進めると、予算確保や業務調整で行き詰まります。
失敗を防ぐための対策
対策① 全体設計(ロードマップ)を先に描く
個別ツール導入の前に、ゼロトラストの全体像と段階的ロードマップを設計することが重要です。
対策② 小規模PoCで業務影響を検証する
限定部署・限定システムでPoCを行い、業務影響とセキュリティ効果を事前に確認します。
対策③ 利便性とセキュリティのバランスを取る
すべてを厳格に制御するのではなく、リスクベースで制御レベルを調整することが重要です。
対策④ 運用を前提とした設計を行う
導入後の運用負荷を考慮し、ログ分析・権限管理・定期見直しの体制を整えます。
対策⑤ 経営層への説明材料を用意する
リスク低減効果や事故事例を用いて、ゼロトラスト導入の必要性を経営視点で説明することが成功の鍵です。
導入を成功に導く実践ポイント
「完璧」を目指さず段階的に進める
最初から理想形を目指すのではなく、現実的な範囲から始めることが重要です。
外部パートナーの知見を活用する
ゼロトラストは設計難易度が高いため、経験豊富なパートナーの支援が失敗回避につながります。
定期的に見直し・改善を行う
環境変化に合わせてポリシーを更新し続けることが、ゼロトラストの本質です。
まとめ
ゼロトラストの失敗原因は「進め方」にある
多くの失敗は、技術ではなく導入プロセスに起因しています。
失敗例を知ることが最大のリスク対策
事前に失敗パターンを理解し、対策を講じることで成功確率は大きく高まります。
まずは自社の現状整理から
ゼロトラスト導入を成功させるために、現状の棚卸しとロードマップ設計から始めましょう。