EC市場の拡大と消費者ニーズの高度化により、物流全体の中でも「ラストワンマイル配送」の重要性は年々高まっています。一方で、現場ではコスト増・人手不足・非効率といった課題が深刻化しており、従来のやり方では限界が見え始めています。本記事では、ラストワンマイル配送が抱える3つの構造的な限界と、それを打開するDXの解決策について解説します。
ラストワンマイル配送の重要性
顧客体験を左右する最終工程
ラストワンマイル配送は、物流プロセスの中で唯一、顧客と直接接点を持つ工程です。配送スピードや正確性、再配達の有無は、企業のブランド評価や顧客満足度に直結します。
物流コストの大部分を占める工程
全体の配送距離は短いものの、個別配送・時間指定・再配達などにより、ラストワンマイルは物流コストの中でも最も非効率になりやすい領域です。
ラストワンマイル配送が抱える3つの限界
限界① 配送コストが下がらない構造
少量多頻度配送や再配達の増加により、1件あたりの配送コストは年々上昇しています。人手依存のオペレーションでは、これ以上のコスト削減は難しいのが実情です。
限界② ドライバー不足と労働環境の悪化
ラストワンマイルは短距離・多拠点配送が中心となるため、拘束時間が長く、ドライバーの負担が大きい工程です。人手不足がさらに深刻化し、サービス維持自体が課題となっています。
限界③ 都市・地域特性への対応力不足
都市部では交通渋滞や駐車規制、地方では配送距離の長さや人口減少など、地域ごとの条件が大きく異なります。画一的な配送モデルでは対応しきれません。
DXによる解決策
配送ルート最適化とデータ活用
AIを活用したルート最適化により、走行距離や待機時間を削減できます。配送データを蓄積・分析することで、再配達削減や効率化が可能になります。
自動配送ロボット・小型EVの活用
歩行者空間や住宅街では、自動配送ロボットや小型EVが有効です。人手に依存しない配送手段として、実証・社会実装が進んでいます。
無人化・非対面配送の拡大
宅配ボックスや置き配、スマートロッカーの活用により、再配達問題を大きく改善できます。DXは配送オペレーションそのものを変革します。
※ ラストワンマイル配送の将来像については、以下の記事で詳しく解説しています。
👉 ラストワンマイル配送の未来|自動配送ロボット・小型EVの社会実装
企業が今から取るべきアクション
ラストワンマイルを前提とした物流設計
幹線輸送や倉庫DXだけでなく、ラストワンマイルまで含めた物流全体設計が重要です。部分最適ではなく全体最適を意識する必要があります。
小規模PoCによるDX検証
配送ロボットやルート最適化システムなど、限定エリアでPoCを実施し、効果と課題を検証することが有効です。
国家プロジェクト・自治体連携の活用
自動配送やスマート物流は、国や自治体の実証事業と連携することで導入ハードルを下げられます。
まとめ
ラストワンマイルは従来モデルの限界点
人手・コスト・地域対応の面で、従来型配送はすでに限界を迎えています。
DXはラストワンマイル変革の鍵
データ活用・自動化・無人化によって、ラストワンマイル配送は大きく変わろうとしています。
まずは自社配送の課題整理から
自社のラストワンマイル課題を可視化することが、DX成功への第一歩です。